小島正樹 『硝子の探偵と消えた白バイ』

硝子の探偵と消えた白バイ (講談社ノベルス)
 警視庁のキャリアである幸田を乗せた車を先導していた白バイが、とあるビルのところで忽然と姿を消します。事件の依頼を受けた「ガラスの探偵」朝倉は、世界で一番頭が良く、容姿端麗、おそろしく腕が立ち、非の打ちどころがないと自身を評しますが、実際の調査に際しては、頓珍漢な推理を助手の小太郎によって助けられて軌道修正している有様。そして、白バイ消失事件は、調査をする朝倉たちの前で意外な広がりを見せ始めます。

 衆人環視の中で消失し、突如屋上に現れたかのような白バイ。空中から発射されたかのような銃弾。こうした不可能状況が序盤から次々に提示され、濃すぎるキャラクターたちの掛け合いのもとに物語は速いテンポで展開していきます。
 ですがこれらの不可能状況を盛り込んだ展開に関してだけ言えば、トリック自体はやや警察の捜査の甘さを指摘できないでもないですが、大きな瑕疵もなく面白いものになっている割に、結果的には意外にも控え目なものになっていて、読者に強烈なインパクトを与える仰天のトリックという類とは性質を異にすると言えるでしょう。
 逆に、終始強調される脱力系の探偵のキャラは、人によっては鼻に付くかもしれませんが、それすらも実は怒涛の結末に繋がることになります。
 比較的コンパクトにまとまっている割には盛り沢山で、今後のシリーズ展開をも期待させる一作。