周木律 『五覚堂の殺人 Burning Ship』

五覚堂の殺人 〜Burning Ship〜 (講談社ノベルス)
 数学的な意匠を凝らして設計された建築家・沼四朗の二つの館でこれまでに起こった事件の背後にいた善知鳥神から呼び出され、数学者の十和田は雪の残る山中にある五覚堂を訪れます。この館では、<双孔堂>の事件で知り合った警視庁のキャリアの宮司の妹である百合子が巻き込まれていたと十和田は聞かされます。数学者、医師、哲学者として名を馳せた「五感の学者」と呼ばれた志田幾郎の死で、彼の財産の相続人たちが集められた館で起こる事件の真相とは。

 シリーズ3作目。
 事件が起こったことを知らされて、そこで起こった出来事を記録された映像と善知鳥神の話によって十和田が推理するパートと、現在進行形で事件の起こる宮司百合子らのパート、そして志田家で起こる事件について何者かに示唆されて調べ始める宮司の視点によるパートで交互に構成された一作。
 フラクタル構造に偏執的なまでにこだわったガジェットによって織りなされる衒学趣味が、作品そのもののリーダビリティを損なうことなく用いられている辺りは凄いところかもしれません。
 トリックは大仕掛けなものと、小技を効かせたものとを上手く組み合わせたものであり、この種の館ものの醍醐味を味わえる一作となっていると言えるでしょう。