加納朋子 『コッペリア』

 意外にもこれが初の長編だそうです。
 人形に恋した男と、天才人形作家の創り出した人形そっくりな女、天才ゆえに壊れて行く人形作家など、人物の配置が絶妙でした。脇役ながらも人形の性格を一発で言い当てるアンティーク喫茶店のマスターの存在とか、あれがあるから物語が締まっているんですよねぇ。

 ミステリとしての仕掛けに関しても、序盤から幾つか気になる記述はあったのですが、突然にその仕掛けが明かされたときは「え?えっ?」とばかりにページを戻してついつい確認してしまいたくなるサプライズの演出が巧いです。

 また、人形に恋した男と人形そっくりな女、そしてその人形を生み出した天才人形作家らの人物像が、物語の終盤においてそれまで描かれてきた彼らの心の動きを拾い集めるように再構築されるさま―そしてそれはそのまま物語自体の再構築だとも言えるかも知れません。つまり一度読み終わった後にもう一度読み返すと、序盤のエピソードの全てが別の意味を持って来る、そんな凄さも感じられました。
 最後の結末とエピローグの〆が良いので、読後感も物凄く良かったです。