リンダ・ハワード 『一度しか死ねない』

一度しか死ねない
 これまで読んだリンダ・ハワード作品の中では、サスペンス的には最も成功した作品ではないでしょうか。
 ひょんなことでテレビに出演した女執事を手に入れるために、異常な執着と身勝手な妄想を抱くストーカーの不気味や異常性というものが、実に良い存在感を持っています。
 これまで読んだ作品の中では割と意図的に無視されたきらいのある、警察官としての事件関係者であるヒロインへの距離の置き方なども、物語の展開に上手く組み入れられていますし、比較的サスペンス要素はきちんと成立していたと言えるでしょう。
 ただタイトルに関しては、"Dying to Please"を結末近くで出てくる台詞に絡めて「一度しか死ねない」と訳したのは、いかがなものかという気はしますが。
 とりあえず、面白かったです。