冲方丁 『マルドゥック・アノニマス 2』

マルドゥック・アノニマス 2 (ハヤカワ文庫JA)
 保護証人を失ったイースターズ・オフィスは、秘密裏にウフコックを敵方に潜入させます。<クインテット>と名乗る集団では、ハンターというボスを中心に、様々な能力を持ったメンバーが、自分たちをゲームの駒にしている者たちの支配から抜け出すために、緻密な戦略に沿って裏社会の勢力図を一気に書き替えようと動きます。暴力を厭うウフコックが自分を殺し、ただ彼らのすることを見ていることしか出来ない中で、社会の中枢に根差した真の敵、そして新たな敵の姿が浮かび上がってきます。

 終焉にむけて、少しずつ進んでいく物語。
 前作に引き続き、ただ傷ついていくしかないウフコックがひたすら痛ましい半面で、ハンターを中心とした<クインテット>が単なる悪という枠には収まらず、物語をけん引していく中心にまでなっているのがこの巻だと言えるでしょう。それは、『マルドゥック・スクランブル』では倒すべき敵であった<カトル・カール>のボイルドが、『マルドゥック・ヴェロシティ』では物語の絶望の象徴として大きな存在感を持った主人公の一人となったのと似た図式と言えるでしょう。
 ハンター率いる<クインテット>がどこに行き着くのか、そしてウフコックもまた絶望へと堕ちて行くのを避けられないのか、その時バロットは・・・?と、続きが気になるところです。