ジェフリー・ディーヴァー 『シャドウ・ストーカー 上/下』

シャドウ・ストーカー 上 (文春文庫)シャドウ・ストーカー 下 (文春文庫)

 相手の嘘を見抜く取り調べのスペシャリストのキャサリン・ダンス。休暇を利用してキャサリンは、友人で人気歌手のケイリー・タウンと久しぶりに会うことになります。ですがケイリーは、ストーカー化した熱烈なファンに怯えていました。そしてケイリーの周りをストーカーがうろつく中で殺人事件が起こってしまいます。地元警察とぶつかりながらもストーカーの男を観察するキャサリンは、この相手が一筋縄ではいかないことに気付きます。

 リンカーン・ライムシリーズの『ウォッチメイカー』で登場した"人間嘘発見器"キャサリン・ダンスを主人公にしたスピンオフ・シリーズ第3弾。
 最初からストーカー男が怪しさ満載ですが、嘘を吐くことを何とも思わない、もしくは自分の言っていることこそが真実であると思い込むストーカーという性質上、そしてその相手の知能の高さゆえに、彼の嘘を見抜くことをキャサリンができずにいる間に、事件は次々に起こってしまいます。
 さらには、終盤になればなるほど思わぬ展開が怒涛のように押し寄せてくるディーヴァーの手腕は本作でもいかんなく発揮され、最後まで気の抜けない展開が続くことになります。
 そして、事件の渦中で翻弄されるケイリーの複雑な人生が少しずつ明らかになって最後に爆発するかのように描かれると同時に、シリーズを通して描かれる主人公のキャサリン・ダンス自身の周囲の人間関係にも大きな展開が見られる本作は、文句なしに読みごたえある一作と言えるでしょう。