久住四季 『トリックスターズL』

トリックスターズL (メディアワークス文庫)
 大学の研究施設で、英国の「オズ」から魔術師を招いて実験を行うため、現在は日本で客員教授をしている、世界に六人しかいない魔術師の一人である佐杏冴奈とそのゼミ生も研究施設に向かうことになります。外界から隔絶されたその施設内で、密室状態で発見される首を吊った死体。事件の真相、そこにある物事の真実はどこにあるのか。

 シリーズ2作目ですが、主人公であり語り手である天乃原周という人物が、語り手としては一癖もふた癖もあり、時として詐術を展開する立ち位置にあるという前作での様式を一部踏襲したスタイルが、本作で既に確立しているのかもしれません。何やら思惑があることで、あっさりと途中退場して周に探偵役とトリックスターの役割を丸投げしてしまう佐杏と、その思惑に乗って密室の謎解きを披露する周ですが、「さすがにその密室トリックは無いだろう」という脱力モノの推理と、佐杏による最終的な着地を含めて、良く計算された作品であるということは出来るでしょう。