佐々木丸美 『罪灯』

罪灯 (創元推理文庫)
 冬都、春都、夏都、秋都の四人を主人公としたプロパビリティの犯罪を扱ったオムニバス。鼻持ちならない同級生を冬の湖の危険区域に誘導する冬都、画廊でのアルバイトをする春都が目撃した溺れる母娘、夏都が恨みのある相手を陥れる花火の夜、観光地で起こった事故現場に居合わせた秋都。犯罪とは言い切れない彼女らの罪を、彼女らが仄かな恋心を寄せる相手が解き明かします。

 『崖の館』から連なる、百人浜の女主人の館へと続く物語。
 四人の少女それぞれの持つ少女らしい残酷さやエゴ、女友達同士の微妙な感情のせめぎ合いと、年上男性への幼い恋心という著者らしい持ち味が見え隠れする連作短篇集に仕立てられています。
 四人の少女の、少女ゆえの傲慢さや無邪気さ、退屈、無関心といった性質から来る悪意は、やがてプロパビリティの犯罪へと結実することになります。ですが、同時に彼女らに芽生える恋心を向ける男性は、そんな犯罪の芽を見逃しません。報われることのない恋はやがて、少女たちを大人へと導き、それと同時に彼女らの「罪」を「罪」として深く心に植えつけることになります。